受診判断に「正解」はない
──特養で働く看護師として考えていること
体調不良の入所者さんがいると、
介護士さんは不安でいっぱいになります。
特に夜勤。
一人で対応する時間帯は、
「このまま様子を見て大丈夫なのか」
「何かあったらどうしよう」
そんな思いを抱えながらの勤務になります。
私は日勤帯のみの勤務です。
オンコール対応はしますが、現場にいるわけではありません。
それでも、
できるだけ不安なく一晩を過ごしてほしい。
その思いで、日々「受診判断」と向き合っています。
受診は「早すぎても、遅すぎても」難しい
体調不良があれば、受診はします。
ただし、タイミングの判断はとても難しいものです。
症状が軽い段階で受診しても、
検査や処方につながらないことがあります。
一方で、判断が遅れれば、
命に関わったり、本人のつらい時間が長くなることもあります。
さらに受診には、
- 送迎をお願いする相談員さんへの調整
- 駆けつけてくれる家族への説明
- 「なぜ今このタイミングで受診するのか」を伝える責任
が伴います。
受診判断は、
医学的な判断だけで完結しない選択でもあります。
原因が分からないまま、判断しなければならない現実

発熱の原因として、施設では
- 誤嚥や呼吸器感染などの呼吸器由来
- 膀胱炎・腎盂腎炎などの尿路感染
- 偽痛風
が疑われることが多くあります。
ただし実際には、
検査をしなければ分からないことがほとんどです。
施設で様子を見ていても、
- インフルエンザやコロナは
発熱後すぐには検査できない場合がある - 自覚症状が乏しくても
SpO₂低下などのバイタルサインの変化が先に出ることがある - 受診してレントゲンを撮って初めて
肺炎や心不全と分かることもある
といったことを、これまで何度も経験してきました。
一方で、
発熱初期や末梢循環の影響により、
SpO₂が一時的に低く表示される場合もあります。
SpO₂は重要な指標ですが、
それだけで判断できるものではなく、
あくまで判断材料の一つとして見ています。
判断のよりどころになるのは「普段との違い」
検査ができない状況で、
私が最も大切にしているのは、
- いつもより明らかにきつそうではないか
- 表情や反応に違和感はないか
- 動きが落ちていないか
といった、普段との違いです。
このまま様子を見てよいのか。
悪化する可能性はないのか。
処方が必要な状態ではないのか。
そうした点を整理しながら考えます。
迷うときは、
嘱託医のいる病院の外来看護師さんに相談します。
一人で抱え込まず、
状況を共有し、意見をもらうためです。
▶「様子見」で本当にいい?バイタル正常でも肺炎を疑った、特養看護師の「違和感」の正体

転倒時は「大丈夫そう」に見えても慎重に
転倒した場合はまず、
- 普段どおりの動きができているか
- 日常生活に支障が出ていないか
を確認します。
ただし、
- 頭を打っている場合
- 外観が明らかにいつもと違う場合
は、画像検査で
硬膜下血腫などの異常がないか
確認してもらうことが多いです。
認知症のある入所者さんでは、
- 痛みをうまく言葉にできない
- 受傷時の状況が分からない
- どこを痛めているのか特定できない
ことも珍しくありません。
そのような場合は、
「分からない」という事実を、そのまま伝えるようにしています。
それによって、
思いがけない部位の怪我が見つかったこともありました。
受診判断は、迷いながら続けていく仕事
受診判断に、明確な正解はありません。
だからこそ、
- 今、分かっていること
- 分からないこと
- 施設で対応できる範囲
- 外に委ねるべきタイミング
を整理しながら、
その時点で最善と思える選択を重ねていきます。
夜勤で現場に立つ介護士さんが、
「一人じゃない」と感じながら
一晩を過ごせるように。
それが、
昼間しかいない看護師として
私が大切にしている受診判断です。















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