「様子見」で本当にいい?バイタル正常でも肺炎を疑った、特養看護師の「違和感」の正体
「特養の看護師って、急変もなくて暇そうでいいね」
急性期病院で働く友人や、ときには施設内のスタッフから、そんな言葉をかけられることがあります。
たしかに、救急搬送やコードブルーが日常的に起こる現場ではありません。
けれど、特養の「何も起きない一日」は、偶然できあがっているわけではないのです。
目立たないけれど、
起こりそうな変化を先に察知し、何も起きない状態を保つ。
それが、特養看護師の大切な役割です。
今回は、
バイタルサインが正常でも、どうしても見逃せなかった違和感についてお話しします。
【事例】数字は「一見、正常」だった
ある日の日勤帯。80代後半の入居者Aさん。
朝から食事が進まず、表情もどこか冴えません。
測定したバイタルは次の通りでした。
- 体温:36.6℃(平熱)
- 脈拍:100回/分(安静時としてはやや速い)
- 血圧:120/70mmHg(安定)
- SpO₂:96%(普段と変わらず)
発熱もなく、血圧も安定。
酸素の値も問題ありません。
ただひとつ、
安静にしているのに脈がやや速いことが気になりました。
脱水や感染、誤嚥など、
体のどこかで炎症が始まっている可能性が頭に浮かびました。
先輩看護師に相談すると、
「バイタルも悪くないし、今日は様子見でいいんじゃない?」
という反応でした。
「ムセない誤嚥」「熱の出ない炎症」がある
ここで、特養や高齢者ケアではとても大切な視点があります。
誤嚥性肺炎というと、
「ムセた」「咳き込んだ」という場面を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし実際には、
ムセないまま起こる誤嚥(不顕性誤嚥)は少なくありません。
また、高齢者では
炎症や感染があっても、発熱が目立たないこともよくあります。
つまり、
- ムセていない
- 熱もない
- バイタルが大きく崩れていない
これらがそろっていても、
肺炎や感染症を完全に否定することはできないのです。
特養における「食事量低下」は重要なサイン
特養で働く看護師にとって、
「食事が入らない」は、とても重いサインです。
病院のように、
点滴や頻回な検査ですぐに対応できる環境ではありません。
施設では、
食べられなくなる=生活そのものが維持できなくなることを意味します。
だからこそ、
- いつもより食事量が少ない
- 食べるペースが遅い
- ぼんやりしている
こうした小さな変化を、私たちは見逃したくないのです。
「今はまだ大丈夫」ではなく、
“今だからこそ診てもらう”必要があると感じました。

受診判断は、いつも正解が見えない
正直に言うと、
この「受診させるかどうか」の判断は、とても迷います。
早すぎれば、
「特に異常はありません」と言われ、
関係者に申し訳ない気持ちになる。
一方で遅れれば、
「どうしてもっと早く連れてこなかったのか」と
責任を問われることもある。
今回は、
「何もなければ、それでいい」
そう自分に言い聞かせて、協力医療機関への受診を決めました。
結果:見えなかった異常が見つかった
検査の結果は、誤嚥性肺炎でした。
画像検査で肺に陰影があり、炎症反応も高値。
そのまま入院となりました。
医師からは、
「このタイミングで受診できて良かったです。
もう少し遅れていたら、かなり厳しかったと思います」
と言われました。
もしあのとき、
「バイタルは正常だから」と様子見をしていたら――
翌朝、状態が急変していた可能性もありました。

まとめ:「暇そう」に見えるのは、何も起こさないため
健康管理をしている上で、体調が悪化してから対応することが多々あります。
でも、
急変する前の、はっきりしない変化に気づき、先に動くこと。
それが、特養看護師の専門性です。
この積み重ねがあるから、
「今日も特に何もなかったね」という一日が成り立っています。
周囲から「暇そう」と見えるとしたら、
それは、危険の芽を早く摘み取れているということ。
私は、
この「何も起きない環境」を支える仕事に、誇りを持っています。















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