最近、鴨頭嘉人さんの動画で、こんな話を聞きました。
「人間関係の問題は、たった一つ。原因は“情報不足”」
正直、最初はシンプルすぎる気もしました。
でも特養の現場に当てはめてみると、思い当たる場面がいくつもあります。
コール対応、食事介助、受診判断…。
「なんでこの対応?」と感じたことはないでしょうか。
特養での人間関係や、スタッフ間のイライラに悩んでいる方は多いと思います。

ある出来事で見え方が変わった
鴨頭嘉人さんの動画の中で、こんな話がありました。
たとえば体調を崩して病院に行ったとき。
待合室は混雑していて、すでに1時間以上待たされていました。
体はだるく、頭も痛い。正直、それだけでもかなりつらい状態でした。
そんな中、静かな待合室で一人の男の子が走り回っていました。
足音や声が響いてきて、頭にガンガン響きます。
「ここは病院なんだから、少しは静かにできないのか…」
そう思いながらも、子どもに直接言うのは大人げないと思い、我慢していました。
でもそのうち、「親は何をしているんだ」とイライラが強くなってきました。
そのとき、小さな声で話しかけられました。
「すみません…」
顔を上げると、申し訳なさそうな表情の男性が立っていました。
どうやら、あの男の子の父親のようでした。
そして、その男性は絞り出すような声でこう言いました。
「実は、2時間ほど前にあの子の母親が亡くなりまして…。
言い聞かせてはいるのですが、どう受け止めていいか分からないみたいで…」
その言葉を聞いた瞬間、さっきまでのイライラが一気に消えました。
状況は何も変わっていません。
それでも、見え方はまったく変わりました。
変わったのは「事実」ではなく「情報」
あとから考えると、変わったのは事実ではなく、
たった一つの情報が加わっただけでした。
それまでは、
- うるさい子ども
- 放置している親
という情報しか持っていなかった。
だからイライラしていた。
でも背景を知った瞬間、同じ出来事がまったく違って見えました。
特養の現場でも同じことが起きている
この構造は、特養の現場でも日常的に起きています。
例えば、
- コール対応が遅い → サボっているように見える
→ 実際は、転倒リスクの高い利用者の対応で離れられない - 食事介助が遅い → やる気がないように見える
→ 実際は、誤嚥リスクを考えてスピードより安全を優先している - 記録が遅れている → 段取りが悪いように見える
→ 実際は、急変対応や家族対応で時間を取られている
外から見える行動だけだと、どうしても誤解が生まれます。

特養の食事介助で起きやすい「誤解」
特養では、食事介助を待っている利用者さんが複数人います。
一方で、対応できるスタッフの数は限られています。
時間帯によっては、
「早く回さないと回らない」という空気になることもあります。
あるとき、スタッフの一人が利用者さんの居室で食事介助に入り、なかなか戻ってきませんでした。
正直に言うと、
私自身も、「遅い」と思っていました。
現場が忙しくなるほど、その感覚は強くなります。
周囲からも、
「やっぱり、あの人は遅いよね」
という声が出ていました。
でも実際に行われていたのは、まったく違うものでした。
そのスタッフは、
- 誤嚥しないように姿勢を丁寧に整え
- 一口ごとに嚥下の様子を確認しながら
- 無理のないスピードで食事介助をしていた
いわゆる「急がない介助」です。
結果として、その利用者さんは誤嚥することなく、
落ち着いて食事を終えることができました。
もちろん、他にも食事介助を待っている利用者さんはいます。
現場としては、“できるだけ早く回したい”という気持ちもあります。
それでも、
ここで何を優先するかが、現場の質を分けます。
特養で大切にされている「ユニットケア」は、
“全員を同じスピードで回すこと”ではありません。
- ゆっくりでも安全に食べることが必要な人
- 少し時間をずらしても問題ない人
- その日の体調でペースを変える必要がある人
一人ひとりに合わせた関わりが前提になります。
つまり、
「早い=良い介助」ではなく、
「その人に合っているかどうか」が基準になります。
ナースコール対応でも起きる“情報不足”
ナースコールが鳴りっぱなしで、「対応が遅いな」と感じる場面がありました。
少しイライラしながら、自分でコール対応に入りました。
そのときは正直、
「何をやっているんだろう」と疑ってしまいました。
でもあとで分かったのは、まったく違う状況でした。
そのスタッフは、失禁があり、総替えの対応中。
手が離せない状態だったのです。
それを知ったとき、
「さっきの見方は違ったな」と思いました。
状況は何も変わっていません。
ただ、“知らなかった情報”が一つ加わっただけです。
それでも、見え方は大きく変わりました。
「対応が遅い人」ではなく、
「目の前の利用者さんに集中していた人」だったのだと気づきました。
「いつもと違う行動」には理由がある
現場で意識したいのはここです。
普段と違う動きには、たいてい理由があります。
- 優先順位が変わっている(急変・転倒リスクなど)
- リスクを回避している(誤嚥・事故防止)
- その場を離れられない(排泄介助・対応中)
つまり、
見えている行動ではなく、見えていない判断で動いていることが多いということです。
自分も「情報不足」を作っている
これは少し耳が痛い話ですが…
情報不足は相手だけの問題ではありません。
- 忙しくて説明を省く
- 「分かっているだろう」と思ってしまう
- 聞く余裕がない
その結果、
自分の行動も「分からない動き」として見られてしまうことがあります。
現場でできるシンプルな対策
全部を解決するのは難しいですが、
一つだけ意識するならこれです。
「いつもと違う」と感じたら、一度だけ聞く
「どうした?」
「何かあった?」
それだけで、見え方が変わることがあります。
それでも難しい現実
ただ、現場では
- 人手不足
- 時間がない
- 情報共有が追いつかない
こういった事情もあります。
だからこそ、
「全部理解しよう」とするよりも
「決めつけを一回だけ止める」
それくらいが現実的だと思います。

まとめ
特養の人間関係で感じるイライラは、
性格の問題ではなく「情報不足」で起きていることが多い。
- 状況が見えていない
- 背景が共有されていない
- 判断の理由が伝わっていない
このズレが、イライラや誤解につながります。
だからこそ、
「情報が足りていないかもしれない」と一度立ち止まる
それだけで、現場の見え方は少し変わります。
忙しい現場だからこそ、すべてを理解するのは難しい。
それでも、見えていない情報があるかもしれないと思えるだけで、人への見方は少し変わります。
※食事介助で誤嚥が起きやすいタイミングはこちら
→特養の食事介助で誤嚥が起きるタイミング|最初の3口が危険な理由と前兆サイン
※ユニットケアの考え方はこちら
→業務をこなす看護から、暮らしを支える看護へ【50代看護師】ユニット型特養で感じた変化
※受診判断で迷う場面についてはこちら
→特養での受診判断に迷ったとき|発熱・転倒時に看護師が大切にしていること















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