転倒後、
「受診するほどではない気がする。でも安心もできない」
特養では、そんな場面があります。
私は、この“微妙なケース”ほど難しいと感じています。
「このまま様子を見て本当に大丈夫だろうか」
そんな不安を感じながら判断することもあります。
特養の「様子観察」は、ただ時間を置くことではありません。
転倒後、実際にどんなことを考えながら判断しているのかを書いてみます。
「様子観察=ほったらかし」ではない
「様子観察」と聞くと、
「とりあえず見る」
「今は何もしない」
そんなイメージを持たれることがあります。
でも実際は、
- 食事量
- 表情
- 会話の反応
- 眠気
- 動き方
- 痛み
- バイタル
- いつもとの違い
など、小さな変化を見続けています。
高齢者は、転倒直後には症状がはっきり出ないことがあります。
だからこそ、
「今は大丈夫そう」
だけでは安心できないこともあります。
私は、数値や症状だけではなく、
「いつもと違う」
という違和感も大事にしています。
「受診するほどではない」が難しい
特養で難しいのは、
「絶対に受診が必要」
とも言い切れず、
「完全に安心」
とも言えないケースです。
例えば、
- 頭は打っていない様子
- 骨折っぽくはない
- 普通に会話できる
- 歩けている
それでも、
「何か気になる」
ということがあります。
高齢者は痛みや不調をうまく伝えられないことも多く、認知症がある場合は転倒状況そのものがはっきりしないこともあります。
だから、“違和感”を軽く見ないようにしています。
「変化があったら教えてください」だけでは曖昧
様子観察中は、介護士さんへの伝達も重要だと思っています。
ただ、
「変化があったら教えてください」
だけでは、人によって受け取り方が変わってしまいます。
そのため、
- 食事量が落ちていないか
- 眠り込みすぎていないか
- いつもより反応が鈍くないか
- 痛みが強くなっていないか
- 歩き方が変わっていないか
など、できるだけ具体的に観察ポイントを伝えるようにしています。
介護士さんも不安を感じていることが多いため、
「どこを見ればいいのか」
を共有しておくことは大切だと思っています。
「どうしたらいいですか?」と聞かれる重さ
転倒後、
「受診するべきか」
「まずは様子観察か」
迷う場面では、介護士さんたちから、
「どうしたらいいですか?」
と聞かれることがあります。
でも実際には、看護師自身も迷っていることがあります。
今すぐ受診するべきなのか。
まずは様子観察でいいのか。
高齢者は症状がはっきりしないことも多く、正解がすぐ見えないこともあります。
だからこそ、判断には責任の重さも感じます。
もちろん不安もあります。
それでも、
- 介護士さん
- 相談員さん
- 施設長
- ご家族
それぞれと相談しながら、その入所者さんにとってどうするべきかを考えています。
特養の判断は、看護師一人だけで完結するものではないと思っています。

迷った時は、「手のかかる方」を選ぶ
正直、受診対応は簡単ではありません。
- 家族連絡
- 搬送調整
- 付き添い
- 記録
特に夜間帯は、現場への負担も大きくなります。
私自身も、忙しい現場の中で判断に迷うことがあります。
だからこそ、
「自分たちの都合」が判断に混ざっていないかは意識したいと思っています。
迷った時は、
「手のかかる大変な方」
をあえて選ぶようにしています。
もちろん、毎回受診すればいいという話ではありません。
でも、
- 忙しいから
- 受診対応が大変だから
- 家族説明が必要になるから
そういった理由が判断に混ざり始めると危ないと思っています。
大事なのは、
「この入所者さんの状態を見て、どう考えるか」
だと思っています。
「1回だけの嘔吐」でも受診したことがある
以前、転倒後に受診した入所者さんがいました。
頭は打っていない様子で、明らかな骨折所見もありませんでした。
ただ、その後に一度だけ嘔吐がありました。
普段であれば、「1回だけの嘔吐」で様子観察になることもあります。
それでもその時は、
「転倒後の嘔吐」
という点が気になり、受診を選びました。
結果として、心配していた頭部疾患ではありませんでした。
ただ、別の内科的疾患が見つかり、体調不良が転倒につながっていたようでした。
この経験から、
「転倒したから体調が悪くなった」
だけではなく、
「体調が悪かったから転倒した」
という視点も大切だと感じています。
頭部打撲がある時は、画像確認を重視している
頭部打撲がある場合は、ほとんどのケースで診療時間内に受診し、画像検査をお願いしています。
もちろん、結果として何も異常がないこともあります。
それでも、
「転倒直後には異常がなかった」
という確認をしておくことは大切だと思っています。
高齢者は、その後に別の体調変化が起きることもあります。
だからこそ、転倒直後の状態を確認しておくことは、その後の経過を見るうえでも意味があると感じています。
「胸を張って説明できる判断か」を大事にしたい
特養では、
「今すぐ受診するべきか」
「まずは様子観察か」
迷う場面があります。
正解がはっきりしないことも少なくありません。
だからこそ私は、
「後から振り返った時に、自分はこう考えて判断したと説明できるか」
を大事にしています。
様子観察は、“何もしない”ことではありません。
小さな変化を見逃さないようにしながら、
「本当にこのままで大丈夫だろうか」
と考え続けることなのだと思っています。















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