「特養では、看護師と介護職はどうやって一緒に働くんだろう?」
病院から特養への転職を考えると、少しイメージしにくいところかもしれません。
私自身、特養で働く前は、
「看護師はどこまで介護業務に入るんだろう?」
と思っていました。
実際に働いてみると、看護師と介護職の仕事は、きれいに線を引けるものばかりではありません。
同じ食事、排泄、移動といった生活場面を見ていても、介護職と看護師では気づくところが少し違います。
介護職は日々の「いつも」を知り、看護師はそこに健康状態の視点を加える。
私は、同じ生活を違う視点で見ながら支えているように感じています。
この記事では、私の勤務する特養での経験をもとに、看護師と介護職がどのように連携しているのかを紹介します。
特養では、介護職が日々の生活をよく見ている
特養では、介護職が入所者さんの日常生活に長く関わっています。
食事、排泄、移動、入浴、着替えなど、普段の生活を近くで見ています。
そのため、
「今日はいつもより食べていません」
「立ち上がるときに少し時間がかかっています」
「なんとなく元気がないです」
といった、普段との小さな違いを教えてもらうことも多いです。
看護師がその場だけ見ても分からないことがあります。
私自身、介護職からもらう情報にかなり助けられています。
看護師は、生活の中の変化を健康状態につなげて考える
入所者さんに体調を聞くと、
「どうもありません」
と答えられることもあります。
でも、実際の生活動作を見ていると、
「いつもより立ち上がりに時間がかかっている」
「歩き方が少し違う」
「食べるのに時間がかかっている」
など、言葉だけでは分からない変化に気づくことがあります。
特養では、生活動作そのものが大切な観察材料になります。
介護職が気づいた「いつもとの違い」に、看護師が健康状態や体調変化の可能性という視点を加えて考える。
この組み合わせが、とても大切だと感じています。
食事介助は、看護師にとって観察と調整の場でもある
私の勤務先では、看護師が食事介助に入ることがあります。
ただ、単に食べるお手伝いをするだけではありません。
実際に食べている様子を見ながら、
- 食事量は足りているか
- カロリーや食種は合っているか
- 食事形態はその方に合っているか
- 姿勢は安定しているか
- むせや飲み込みにくさはないか
- 食べるのに時間がかかりすぎて負担になっていないか
などを確認します。
たとえば、噛むのに時間がかかっている方がいれば、
「食べるのが遅い」
だけで終わらせず、
歯や口腔内に痛みや異常はないか。
今の食事形態が合っているか。
カットの大きさを変えた方が食べやすいか。
もう少し柔らかい食事の方が負担が少ないか。
などを考えます。
実際の食べ方を見ながら、施設の方針や必要な専門職の意見も踏まえて調整していきます。
そのときも、看護師だけで決めるわけではありません。
普段の食事の様子をよく知っている介護職。
栄養面を見る管理栄養士。
必要に応じて医師や相談員。
それぞれの意見を聞きながら考えます。
そして、食事形態や提供方法がその方に合うようになると、必要な栄養を無理なく、おいしく食べられるようになることがあります。
食べる本人の負担が減るだけでなく、食事介助もスムーズになり、介護職にとってもケアしやすくなることがあります。
「食べられない」ではなく、「なぜ食べにくいのか」を一緒に考える。
こういう場面は、特養での多職種連携が分かりやすく表れるところだと思います。
排泄の場面でも、見ているものは少し違う
排泄も同じです。
単にトイレ介助をするだけではなく、
トイレまで安全に移動できているか。
立ち上がるときにふらつきや痛みはないか。
尿や便の量・性状に変化はないか。
皮膚に発赤やただれはないか。
尿意や便意をどの程度感じられているか。
など、気づけることがあります。
介護職は、普段の排泄パターンやいつもの動きをよく知っています。
看護師は、そこに健康状態や皮膚、排泄機能などの視点を加えて見ます。
同じ排泄の場面でも、見ているところが少しずつ違う。
その情報を合わせることで、体調変化や介助方法の見直しにつながることがあります。
連携は「情報をもらって終わり」ではない
私は、特養での連携は単に情報を共有するだけではないと思っています。
介護職から、
「最近、食べるのに時間がかかっています」
「立ち上がりが少し大変そうです」
と情報をもらう。
看護師が実際の様子を確認し、健康状態や負担の原因を考える。
必要に応じて介護職や管理栄養士、医師、相談員などと相談しながら、食事形態や姿勢、介助方法などを調整する。
その結果、入所者さんが少し楽に食べられたり、移動や排泄がしやすくなったりすることがあります。
そして、本人に合う方法が見つかると、介護職にとってもケアがしやすくなることがあります。
私は、特養での連携は、
「情報をもらう → 看護師が判断する」
という一方通行ではなく、
それぞれが持っている情報や視点を合わせて、本人にもスタッフにも無理の少ない方法を一緒に探していくこと
だと感じています。
「これは看護師」「これは介護職」だけでは分けきれない
もちろん、看護師と介護職では専門性も役割も違います。
医療に関わる行為には、制度上のルールもあります。
ただ、日常の現場では、
「これは看護師の仕事」
「これは介護職の仕事」
とすべてをきれいに分けてしまうと、見えにくくなることもあります。
介護職は、普段の生活をよく知っています。
看護師は、そこに健康状態や体調変化の視点を加えて見ます。
私は、仕事を分けるというより、それぞれが持っている情報や視点を持ち寄る感覚に近いと思っています。
特養では、介護職にかなり助けてもらっている
特養は、病院より介護職の人数が多く、看護師は少人数です。
病院から転職すると、
「介護職中心の職場でうまく馴染めるかな」
「看護師が少なくて孤立しないかな」
と不安に感じる方もいるかもしれません。
でも、私自身は介護職の方たちにかなり助けてもらっています。
看護師の人数が少ないことを分かって気にかけてもらうこともありますし、入所者さんの日常の様子を教えてもらうことも多いです。
相手の話をきちんと聞く。
お願いするときには理由を伝える。
分からないことは確認する。
そんな普通のやり取りを大切にしていれば、必要以上に構えなくてもいいと私は感じています。
医療的な行為は、制度や施設の手順を確認する
一方で、業務分担には制度上のルールもあります。
介護職が行える行為の中には、一定の条件のもとで実施できるものもあれば、医療職が担う必要があるものもあります。
ここは、
「前の施設ではやっていたから」
「昔からこうしているから」
だけで判断しないことが大切です。
介護職へ依頼できる医療に関わる行為については、別の記事で厚生労働省通知をもとに整理しています。
関連記事:特養看護師必見|介護職へ依頼できること・できないこと【厚生労働省通知をもとに解説】
まとめ|同じ生活を、違う視点で支える
特養では、看護師と介護職の役割は違います。
介護職は、日々の生活を支えながら、入所者さんの「いつも」をよく知っています。
看護師は、そこに健康状態や体調変化の視点を加えて考えます。
食事。
排泄。
移動。
どれも一見すると日常の生活場面ですが、実際に見ていると体調変化や生活のしづらさのヒントがたくさんあります。
介護職が気づいた変化を看護師へ伝える。
看護師が健康面から考える。
多職種で方法を調整する。
入所者さんが過ごしやすくなる。
そして、介護職もケアしやすくなる。
私は、この循環そのものが特養での連携だと思っています。
仕事をきれいに分けることよりも、
同じ生活を、それぞれ違う視点から見て、より良い方法を一緒に探していくこと。
そこに、特養ならではのチームの良さがあるのかもしれません。
※本記事は筆者自身の勤務経験をもとに、特養における看護職と介護職の連携の一例を紹介したものです。人員配置、業務分担、介護業務への関わり方、医療的ケアの実施体制等は施設によって異なります。医療行為等の実施については、関係法令や厚生労働省通知、医師の指示、所属施設の手順等に沿って確認してください。


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