高齢者の食事介助で困ったときに|特養看護師が見るポイントと対応まとめ

施設看護師(特養)のリアル
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特養で食事介助をしていると、迷うことがよくあります。

できれば、しっかり食べてもらいたい。

でも、無理には食べてもらいたくない。

自分で食べられる力があるなら、その力も大切にしたい。

一方で、食事介助が必要な方が何人もいれば、一人にずっと時間をかけることもできません。

「もう少し介助した方がいい?」
「今日はここまででいい?」
「私の介助の仕方で大丈夫?」

食事介助って、意外とジレンマが多い仕事です。

長く高齢者の食事に関わってきて感じるのは、「食べない」「食事が進まない」理由は一つではないということです。

体調が悪いのかもしれない。
眠いのかもしれない。
食事だと分かっていないのかもしれない。
硬くて食べにくいのかもしれない。
量が多いのかもしれない。
途中で疲れてしまったのかもしれない。

だから私は、

「どうやったら食べてもらえる?」

だけではなく、

「なぜ今、この人は食べにくいんだろう?」

と考えるようにしています。

この記事では、特養で食事介助に関わる中で、私がどんなところを見ているのかをまとめます。

食事介助の姿勢や一口量、食べるペースなど、基本的な介助の工夫についてはこちらにまとめています。

【特養の食事介助のコツ】誤嚥に注意しながらスムーズに介助する工夫


「食べない」には、いろいろある

いつもは食べている方が、今日はほとんど食べない。

そんなときは、まず体調を見ます。

発熱はないか。
呼吸はいつもと違わないか。
しっかり目が覚めているか。
いつもより元気がない、ということはないか。

一方、体調には大きな変化がなくても、食事が進まないことがあります。

食欲がない。
眠い。
疲れている。
姿勢がつらい。
噛みにくい。
飲み込みにくい。

そして、認知機能が低下している方では、目の前にあるものが食事だと分かりにくくなっていることもあります。

同じ「食べない」でも、理由によって関わり方は変わります。


「おいしいですよ」で口が開くこともある

食事を前にしても、なかなか口が開かない。

そんなとき、

「ご飯ですよ」
「これは○○ですよ」
「おいしいですよ」

と声をかけると、ふっと表情が変わって口を開けてくれることがあります。

食べることにつながるきっかけは、人によって違います。

食事を見てもらうことで分かる方もいれば、声をかけることで食べ始める方もいます。

反対に、こちらがいろいろ働きかけても、食べることにつながらないこともあります。

認知機能の低下が進むと、食べ物とそうでないものの区別が難しくなり、安全面への配慮が必要になることもあります。

だから、

食事だと気づくきっかけを作ることと、食べることを無理に促し続けることは違う

と思っています。

▶ 認知症で食事が進まないとき|「食べる準備」を支える5つの食事介助の工夫


食事介助は、普段の関係も助けになる

食事介助は、食事の時間だけで完結するものでもないと感じています。

普段から関わっている介護士さんは、その方の「いつも」をよく知っています。

「この声かけだと反応しやすい」
「このくらい手が止まるのはいつものこと」
「今日はいつもより元気がない」
「急かさない方が自分で食べ始める」

そんな情報は、食事介助でも役立ちます。

初めて介助する人には分かりにくい反応でも、いつも関わっている人なら、

「今日はちょっと違うね」

と気づくことがあります。

もちろん、慣れているから安全とは限りません。

それでも、普段からのなじみの関係の中で知っている「その人らしい反応」も、大切な観察情報のひとつだと思っています。


食べ始めたら、最初の数口をよく見る

食べ始めたら、

  • 口に取り込めているか
  • 噛めているか
  • 飲み込めているか
  • むせていないか
  • 声や呼吸に変化はないか

などを見ます。

私は最初の数口を、「今日の食べる状態を確認する時間」として意識しています。

昨日まで普通に食べていたから、今日も同じとは限りません。

「3口」という数字そのものに医学的な意味があるわけではなく、食べ始めを少し丁寧に見るための、自分なりの目安です。

▶ 私が「最初の3口」を特に注意して見る理由と誤嚥の前兆サイン


むせる・ゴロゴロするなら、いったん止まる

食事中に、

「むせが増えた」
「声がゴロゴロしてきた」
「飲み込みに時間がかかる」

と感じたら、次の一口を急ぎません。

いったんスプーンを止めて、

  • 呼吸は落ち着いているか
  • 口の中に食べ物が残っていないか
  • 表情はどうか
  • 声はいつもの状態に戻るか

などを見ます。

「むせていないから大丈夫」とも、「ゴロゴロしたから誤嚥している」とも言い切れません。

一つの症状だけで決めず、いつもとの違いを合わせて見ることが大切です。

▶ 食事中の「ゴロゴロ声」は大丈夫?誤嚥を疑うときの観察ポイント


食べにくいなら「本人」だけでなく「食事」も見る

食事が進まないと、

「この人は食べられなくなった」

と思ってしまいがちです。

でも、本人ではなく、今の食事が合わなくなっていることもあります。

硬さはどうか。
大きさはどうか。
まとまりやすいか。
水分の形態は合っているか。

食形態を調整することで、食べやすくなることがあります。

ただし、「むせるから、とろみを濃くする」「食べにくそうだから細かくする」と自己判断で変更すればよいわけではありません。

その方の状態を共有し、必要に応じて管理栄養士や医師、歯科医師、言語聴覚士などと相談しながら考えます。


「全部食べてもらう」が必要なのか迷うこともある

ある時期、食事介助が必要な方が重なり、食事の時間帯に介助が集中していたことがありました。

特に、時間をかけても食事が進みにくい方への介助は、職員の負担も大きくなっていました。

そこで、食事形態を見直したり、提供する時間をずらしたりして、食事介助が集中しすぎないように調整しました。

すると、少し余裕ができました。

「これでよかった」

と思っていたのですが、しばらくすると別のことが起こりました。

それまで自分で食べていたものの、途中で手が止まる方にまで介助が入るようになったのです。

介助すれば、もう少し食べてもらえます。

でも、

「この方、本当にここから介助が必要なのかな?」

と思いました。


「介助すれば食べられる」と「介助した方がいい」は同じ?

自分で食べられる方には、できるだけその力を使ってもらいたい。

一方で、手が止まっているのを見ると、つい手伝いたくなります。

介助すれば全量食べられるかもしれません。

でも、毎回こちらが介助することで、自分で食べる機会まで減らしてしまうのは違う気がします。

あるとき、無理に全量を目指さず、ご本人の様子を見ながら食事を終えたことがありました。

すると次の食事では、お腹が空いていたのか、意欲的に自分から食べていました。

もちろん、

「食事を残せば、次は自分で食べる」

という話ではありません。

一つの経験だけで、そんなことは言えません。

食事量の低下が続く場合は、体調や栄養状態、水分摂取量なども確認し、必要に応じて多職種で対応を検討します。

ただ、この経験から、

「介助すれば食べられる」と「介助した方がいい」は、同じではない

と改めて感じました。


量が多すぎることもある

毎回残すからといって、すぐに「食べられなくなった」と考える必要もないと思っています。

今のその方にとって、一度に提供される量が多くなっている可能性もあります。

食事量の低下が続く場合は、摂取状況を共有し、管理栄養士などと相談しながら、提供量や栄養の取り方を検討します。

たとえば、

  • 一度に提供する量
  • 食事の配分
  • 補食の利用
  • 少量でも栄養をとりやすい方法

など、その方に合った方法を考えていきます。

量を食べてもらうことと、必要な栄養を無理なくとってもらうことは、必ずしも同じではありません。


最初は食べても、途中で疲れる

食べ始めは順調だったのに、後半になると急にペースが落ちることもあります。

眠そうになる。
姿勢が崩れる。
飲み込みに時間がかかる。
口が開かなくなる。

高齢者にとって、食事そのものが負担になることもあります。

そんなとき、

「あと少しだから」

と完食を目指すより、その日の状態によっては休憩したり、食事を終了したりすることもあります。

食べ始めの状態だけでなく、途中から変わっていないかを見る。

ここも大切です。


「食べない」という反応も大切にしたい

口を開けない。
顔をそむける。
途中で手が止まる。
もう食べようとしない。

私は、こうした反応も本人からのサインのひとつとして大切にしたいと思っています。

もちろん、

「食べない=本人が食べたくない」

と決めつけるわけではありません。

体調不良はないか。
食事を認識できているか。
飲み込みにくくないか。
食形態は合っているか。
疲れていないか。

整えられるところは整えます。

食べるきっかけが必要なら支援します。

それでも食べないときに、

「食べられるのだから、もっと食べてもらおう」

と介助を続けることが、その方にとって本当にいいのか。

そこは考えたいところです。


いろいろやっても、食べられなくなることはある

食形態を見直す。
量を調整する。
姿勢を整える。
食べるきっかけを作る。

それでも、少しずつ食べられなくなっていく方もいます。

病気や体調不良が隠れていないかを確認することは大切です。

そのうえで、身体機能の低下や老衰などに伴い、以前と同じようには食べられなくなることもあります。

食べられるように整える。
食べたい気持ちがあるなら支える。
必要なところは介助する。

それでも難しいときは、無理をしない。

食べてもらうことだけではなく、その方にとって食事が苦しい時間にならないことも大切にしたいと思っています。

▶食べない高齢者はどう対応する?特養看護師の判断と関わり方


まとめ|食事介助には、たぶん一つの正解はない

食べてもらいたい。
でも、無理には食べてもらいたくない。

手伝えば食べられる。
でも、できることまで奪いたくない。

ゆっくり関わりたい。
でも、現場には時間の制約もある。

安全も大切。
栄養も大切。
本人の気持ちも大切。

だから食事介助は難しいのだと思います。

私は、「食べない」という結果だけを見るのではなく、

「なぜ今、この人は食べにくいんだろう?」

と考えるようにしています。

食べにくい理由があるなら整える。
その人に合ったきっかけを探す。
自分でできるところは見守る。
必要なところは手伝う。

そして、それでも食べないという反応も無視しない。

食事介助は、「上手に食べさせる技術」だけではありません。

その日のその人を見ながら、どこまで手伝うのかを考え続けること。

それも食事介助の大切な部分なのだと思っています。


※本記事は、特別養護老人ホームでの食事介助について、看護師としての経験をもとに一般的な考え方をまとめたものです。食事量の低下や嚥下状態、必要な栄養量などには個人差があります。実際の食形態、食事量、介助方法などは、ご本人の状態を確認し、医師・歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士などの専門職や施設の方針に沿って検討してください。

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