特養で食事介助をしていると、
「食べる前は気にならなかったのに、喉がゴロゴロしている」
「むせてはいないけれど、声が濁ってきた」
と感じることがあります。
むせていないと、「ちゃんと飲み込めているのかな」と迷うこともあるのではないでしょうか。
私は看護師として36年働き、現在は特別養護老人ホームで、嚥下機能が低下した入所者さんの食事にも関わっています。
食事中にゴロゴロ声が聞こえたとき、私がまずするのは、次の一口を入れずにスプーンを止めることです。
今回は、ゴロゴロ声をはじめ、食事中に気をつけたい変化と、そのときの対応についてまとめます。
ゴロゴロ声は、いったん止めて確認するサイン
食事中や食後に、声がガラガラしたり、濡れたような声になったりすることがあります。
このような声は「湿性嗄声」と呼ばれ、喉の周辺に唾液や食物が残っている可能性を考えるサインのひとつです。
ただし、
「ゴロゴロ声だから誤嚥している」
「声がきれいだから安全」
と、声だけで判断することはできません。
痰や喉の分泌物など、食事以外の原因でゴロゴロしている場合もあります。
大切なのは、声だけで決めつけず、呼吸や表情、飲み込み方なども一緒に見ることです。
食事前と食事中に見ていること
食事を始める前には、しっかり目が覚めているか、呼吸や体調が普段と違わないか、安定した姿勢で座れているかを確認します。
普段は問題なく食べられる方でも、発熱や疲労、脱水、眠気などによって、その日の飲み込む力が低下することがあります。
食事中に特に見ているのは、次の4つです。
- むせや咳が増えていないか
- 声や呼吸音がゴロゴロしていないか
- 飲み込みに時間がかかっていないか
- 疲れたり眠くなったりしていないか
ほかにも、口の中に食べ物をため込む、何度も飲み込む、食べこぼしが増えるなど、いつもと違う変化がないかを見ています。
これらの変化があったからといって、必ず誤嚥しているとは限りません。
反対に、むせていないから誤嚥していないとも言い切れません。
むせなどの反応が目立たないまま気道に入る「不顕性誤嚥」もあるため、ひとつの症状だけでなく、いくつかの変化を合わせて判断します。
気になる変化があったら、次の一口を急がない
ゴロゴロ声やむせ、呼吸の変化などに気づいたときは、次の一口を急いで入れません。
私が確認しているのは、主に次の3つです。
- 口の中に食べ物が残っていないか
- 呼吸や表情が落ち着いているか
- 声がいつもの状態に戻るか
しっかり咳ができているか、唾液を飲み込めているかなども確認し、落ち着いてから食事を再開できるか考えます。
状態が改善しない場合や、同じことを繰り返す場合は、無理に食事を続けません。
介護職と看護師で情報を共有し、必要に応じて医師、歯科医師、言語聴覚士などへ相談します。
食事に時間がかかるときは、完食にこだわらない
食事に時間がかかり過ぎると、次第に疲れたり、眠くなったりする方もいます。
食べ始めは順調でも、食事の後半になると食べるペースが遅くなり、姿勢を保つことや、安全に飲み込むことが難しくなる場合があります。
「もう少し食べられそう」と思っても、疲れや眠気が強く、食事の継続が難しそうなときは、その時点で終了します。
完食できるとうれしいのですが、無理に食べてもらうことより、安全に食べられることのほうが大切です。
私の勤務する施設では、未開封の個包装ゼリーなど、取り置きできるものは、その後の水分摂取の機会に、覚醒状態や嚥下の様子を確認しながら食べてもらうこともあります。
一方、食べかけのものは取り置きできません。
手作りの食事には提供できる時間が決められているため、手を付けていなくても、時間を過ぎたものは再提供しません。取り置きや再提供については、それぞれの施設の衛生管理ルールに従います。
食べにくい状態が続くときは、食事方法を見直す
食事に時間がかかる、疲れて途中で食べられなくなる、ゴロゴロ声を繰り返すなどの状態が続く場合は、現在の食事がその方に合っているかを見直します。
介護職、看護師、管理栄養士などで食事中の様子を共有し、必要に応じて食事形態の見直しを検討したり、一度に提供する量や提供する時間帯の配分を調整したりします。
食べられなかったことだけを見るのではなく、
「次はどうしたら食べやすいかな」
と、その方に合う方法を多職種で考えることが大切だと思っています。
食事中は安定した姿勢を整え、一口量を多くし過ぎず、飲み込んだことを確認してから次へ進みます。食べるペースを急がせず、疲れてきたら休憩することも大切です。
ただし、食べやすい姿勢や食事の形は人によって違います。
「あごを引けば大丈夫」「とろみをつければ安全」と、全員に同じ方法が合うわけではありません。食形態やとろみは自己判断で変更せず、専門職の評価や施設の方針に沿って調整します。
窒息が疑われるときは緊急対応を
呼吸ができない、声が出ない、急に顔色が悪くなる、意識や反応が低下するなど、窒息や重篤な状態が疑われる場合は、食事を中止します。
施設の緊急時対応手順に沿って周囲へ応援を求め、速やかに対応します。
普段の「少しむせた」「声が濁った」という状態と、窒息が疑われる状態は分けて考える必要があります。
まとめ
食事介助で大切なのは、「むせたか、むせなかったか」だけを見ることではありません。
食事中のゴロゴロ声は、誤嚥を確定するものではありませんが、いったんスプーンを止めて、状態を確認するきっかけになります。
次の一口を急がず、呼吸や表情、飲み込み方を確認する。
食事を続けることが難しそうなときは、完食にこだわらず終了する。
同じ状態が続くときは、次に食べやすくする方法をみんなで考える。
その積み重ねが、安全に、できるだけおいしく食べてもらうための大切な食事介助だと思っています。
※本記事は、食事介助における一般的な観察ポイントを、看護師としての経験をもとにまとめたものです。個別の嚥下機能を判断・診断するものではありません。実際の食事形態やとろみ、姿勢、介助方法は、医師・歯科医師・言語聴覚士などの評価や、施設の方針に従ってください。



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