特養で働いていると、とろみのついたお茶や水を準備する機会がよくあります。
一見すると、
「決められた量のとろみ剤を入れて、混ぜればいいだけ」
に思えるのですが……。
これが、意外と難しいんですよね。
ダマになったり。
思ったより薄かったり。
逆に、かなり濃くなってしまったり。
分量どおり入れたはずなのに、
「今日はなんか違うなぁ」
ということもあります。
私は、とろみは分量どおり作ったら終わりではなく、実際に飲んでもらう前にもう一度見るものだと思っています。
そもそも「とろみ」って何のためにつけるの?
水やお茶のようなサラサラした飲み物は、口に入ると素早く流れます。
飲み込む力が弱くなっている人の中には、その速さに飲み込みが追いつかず、むせたり、気管に入りやすくなったりする人もいます。
そこで、とろみ剤を使って飲み物の流れる速さをゆるやかにし、飲み込みやすくすることがあります。
ただし、
とろみは濃ければ濃いほど安全、というものではありません。
薄すぎても合わないことがありますし、濃すぎると逆に飲みにくくなることもあります。
大事なのは、その人に合ったとろみの程度で作ることです。
私の職場では、
「この方は、この色のスプーン」
「お茶150mLに、すり切り1杯」
というように、その人ごとに目安が決まっています。
「今日はなかなか飲み込まれないんですよね」
ある日、介護士さんから、
「今日はなかなか飲み込まれないんですよね」
と言われました。
飲み物を見てみると、とろみがかなり強め。
心の中で、
「そりゃ、ちょっと飲みにくいでしょう💦」
と思いました。
介護士さんも、
「指示された分量どおり入れたんですけど、おかしいなぁ」
と困っていました。
たぶん、作り方を間違えたという単純な話ではありません。
飲み物の量が毎回きっちり同じとは限りませんし、飲み物の種類や温度、混ぜ方、時間の経過でも仕上がりは変わります。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会でも、飲料の種類によってとろみのつき方が異なり、安定するまで時間がかかるものがあるとされています。
だから、
「分量は合っている。だから大丈夫」
ではなく、
「できあがったものは、本当にこの人に合った状態かな?」
と最後に確認するようにしています。
とろみは濃ければ安全、ではない
とろみが薄すぎると、本人の嚥下状態によっては流れが速くなり、むせにつながることがあります。
でも、
「じゃあ濃い方が安全なんだ」
というわけでもありません。
とろみが強すぎると、飲みにくくなったり、べたつきが強くなったり、飲む量そのものが減ってしまうこともあります。
大事なのは、
薄いか濃いかではなく、その人に合っているか。
ここだと思います。
薄く作ってしまったら、粉を追加する?
私は以前、
「とろみ剤の二度づけはダメ」
と教わりました。
一度とろみがついた飲み物に、あとから粉のとろみ剤を直接追加すると、ダマになりやすいからです。
そこまでは知っていました。
でも、
「じゃあ、薄く作ってしまったときはどうするの?」
までは、ちゃんと教えてもらった記憶がありませんでした。
そこであるとき、
「別に濃いとろみを作って、それを混ぜればいいんじゃない?」
と思ってやってみました。
これが意外とうまくいった。
「私、いい方法を思いついたかも」
と、ちょっと嬉しかったんですが……。
あとで調べたら、普通にメーカーでも紹介されている方法でした(笑)。
裏技を発見したつもりだったのに。
すでにありました💦
でも、方法として間違っていなかったのはよかったです。
薄すぎた場合は、粉を直接追加するのではなく、別の容器で濃いめのとろみを作り、それを少しずつ混ぜて調整する方法があります。
逆に濃すぎる場合は、同じ飲み物を少しずつ加えて調整する方法があります。
ただし、製品によって使い方は違うので、実際には使用しているとろみ剤の説明を確認するのが基本です。
「濃すぎた」も意外とあります
さきほどの「なかなか飲み込まれない」という方も、とろみが強すぎるように見えたので、本人に指示されている状態になるよう少し調整しました。
すると、さっきより飲みやすそうになりました。
もちろん、
「飲み込まない=とろみが濃い」
と決めつけるわけではありません。
いつもと違って飲み込みにくそうなら、その日の体調や覚醒状態、嚥下状態など、ほかの原因も考える必要があります。
でも、
「いつもより濃くないかな?」
と、とろみそのものを確認することも一つだと思います。
果汁や乳製品は、とろみがつきにくいこともある
これも現場で困るところです。
私が特に苦労した記憶があるのが、看取り食で出る果汁です。
看取り期になると食事量が減って、
「少しでも口にできるものを」
ということで果汁が提供されることがあります。
ところが、いつものお茶と同じような感覚でとろみをつけても、
「あれ? まだ薄い」
となることがありました。
牛乳や濃厚流動食なども、ほかの飲料と比べてとろみのつき方が違ったり、安定するまで時間がかかったりすることがあります。
製品によっては、いったん混ぜたあと少し時間を置き、もう一度混ぜる方法が案内されているものもあります。
なので私は、
「いつもの量を入れたから、いつものとろみになる」
とは思わないようにしています。
とろみ剤は混ぜ方も意外と難しい
とろみ剤は、ただ適当に混ぜればいいわけでもありません。
製品によって、入れ方や混ぜ方にもコツがあります。
きれいに溶けるよう、すごく丁寧に混ぜている介護士さんもいます。
ダマが見えないくらいきれいにできると、ちょっと嬉しそうだったりします(笑)。
見た目も大事なんですよね。
以前、飲み物の中のダマを見て、
「虫が入っとる」
と言って飲もうとされなかった方もいました。
本人からしたら、確かに何か浮いているように見えます。
安全面だけでなく、
「飲みたいと思える見た目か」
も大事なんだなと思いました。
温度にも気をつけています
私は、飲み物の温度にも気をつけています。
熱すぎないかを確認するのはもちろんですが、温度によってとろみの状態が変わることもあります。
一般的に、温かい飲み物は粘度が低めで、冷めてくると粘度が高くなることがあります。
作ったときにはちょうどよく見えても、少し時間がたったら思ったより濃くなっている。
そんなこともあります。
だから、
作った直後ではなく、実際に飲む時点でもう一度見る。
ここを大事にしています。
「作った時」より「飲む時」が大事
とろみ剤には、製品によって特徴があります。
とろみがつくまでの速さ。
ダマになりにくさ。
牛乳や果汁へのつきやすさ。
必要な量。
待ち時間。
全部同じではありません。
だから、施設で使っている製品の説明を確認しておくことも大切です。
でも、私が一番大事だと思っているのは、
実際に口に入る直前に、もう一度見ること。
薄すぎないかな。
濃すぎないかな。
ダマはないかな。
熱すぎないかな。
そして何より、
この方がいつも飲んでいる状態になっているかな。
そこを最後に確認します。
とろみは「分量どおり」で終わりではない
とろみ剤って、使い始める前は、
「決められた量を入れて混ぜるだけ」
くらいに思っていました。
でも実際にやってみると、意外と奥が深いです。
同じ量を入れても、飲み物や温度、時間によって仕上がりが違う。
薄すぎることもある。
濃すぎることもある。
ダマになることもある。
だからこそ、
決められた量を守る。
製品の使い方を守る。
そして最後に、飲む人に合った状態かを見る。
この3つが大事なんだと思います。
もし少し薄かったり濃かったりしても、
「あ、失敗した」
で終わりではありません。
適切な方法で調整できることもあります。
私も最初から全部知っていたわけではなく、現場で、
「これ、どうしたらいいんだろう?」
と思いながら覚えてきました。
そして、
「これは私が発見した裏技かも!」
と思った方法が、普通にメーカーの説明に載っていることもあります(笑)。
それでもいいんです。
最後に、その人が無理なく飲める状態になっているか。
そこまで見て、とろみ調整は終了。
私はそんなふうに考えています。
※とろみの必要性や程度は、本人の嚥下機能や医療・介護職からの指示によって異なります。本記事は私の勤務経験をもとにしたもので、個別の嚥下評価に代わるものではありません。実際に使用する際は、本人への指示、施設の手順、使用している製品の表示を確認してください。


コメント